奥の細道ちょっとだけ旅 その1 立石寺 (山形・山寺)
岩に巌を重ねて山とし、松柏年旧り、土石老いて苔滑らかに、岩上の院々扉を閉じて物の音聞こえず
「奥の細道」に描写されている立石寺の姿をずっと見たいと思いつつも果たせずに今に至ってしまいました。
訪れた日は山登りにはあいにくの雨です。山寺の駅を降りると眼前に迫る山は雨に煙り頂上付近からは雲が湧いています。
千数十段あるといううねうねと曲がった急な石段の両脇には、樹齢数百年と思われる巨木が林立しています。苔は観光客の多い昨今は生える暇がないのか目立つほどには見かけられませんでした。
岸を巡り岩を這いて仏閣を拝し佳景寂まくとして心澄みゆくのみおぼゆ
確かに山全体が岩盤でところどころで巨石が道をふさぎ、石段はそれを避けながら上へと伸びています。ここは昔から修行者の道だそうで、岩に挟まれての一番狭い道幅は14cmしかないということです。芭蕉が弟子の曾良と一緒にこの同じ道を行ったかと思うと感慨があります。
閑さや岩にしみ入る蝉の声
しかしこの雨の中でも訪れる人は少なくないのですから 芭蕉が体験した夏の日中の深山の静寂はもう味わうことができないのでしょう。